“私とヴァイオリン”その1/福谷 巌



【購入した新作ヴァイオリン】

ヴァイオリンとの付き合い
 私とヴァイオリンの付き合いは,65年ほどになります。 ヴァイオリンを習い始めたきっかけは,私が幼稚園の時に女の先生がウチへ来て,この子は音楽が好きなようだ,ヴァイオリンを習わせてはどうか,と親に言いました。これは自分もヴァイオリンを習いたいが,一緒にどうかと言う意味でした。 親も音楽は好きな方だったので,よろこんでOKしたようです。その後その先生は棒折れとなりましたが,私は何となく続けたという訳です。


ヴァイオリンと調整
 ヴァイオリンと言えば時価数億円ないし十数億円のストラディヴァリやグァルネリが話題になりますが,私の愛用しているヴァイオリンは,何百分の一かもしれないが,170年ほど前に作られたもので,よい音色がして気に入っています。 古い楽器は時々修理・調整が必要ですが,休ませるひまもほとんどなく,過酷な状態で使っていました。空いている短い期間を縫うようにして調整に出したりしていました。 調整は東京の陳昌鉉さんと言う人で,20数年前からここでお願いしています。 陳昌鉉さんは,数年前「海峡を渡るヴァイオリン」というタイトルでTVドラマ化され,一躍一般にも知られるようになった人です。 調整と一言で言ってもわずかな違いでヴァイオリンが見違えるほどよく鳴るようになったり,ぜんぜんダメだったりします。しかしこの方は80歳を越えておられ,いずれ誰か別の人を探さなければなりません。(実は今年5月82歳で亡くなりました)


“弦楽器フェア”で出会ったヴァイオリンメーカー
 3年ほど前(2009年)の秋,東京の“弦楽器フェア”に行きました。弦楽器フェアは,弦楽器メーカー(製作者)が競って新作ヴァイオリンを展示するお祭りです。100人余りのメーカーが出展しており,全部見るわけにはいきません。また近くで試奏する音が交錯してよく聞こえないぐらいです。そこで,たまたまこれは!と思われるヴァイオリンに遭遇しました。これまでも新作ヴァイオリンはよく見ていますが,こんなことは滅多にないことで,新作楽器にしては慣れた音がします。スペアになればと思い,また,こういう新人を応援したいという気持ちもあり,注文しました。以降、文は「その2」へ続く 。下記「その2」ボタンをクリックしてください。
 
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